産経新聞の2021年12月6日朝刊に教室長のエッセーが採用されました。ぜひ一読ください。
我が家にはお願いをいつも聞いてくれる「ばあちゃん」がいる。
ばあちゃんにとって初孫である中学生の息子は、ことあるごとに頼みごとをする。テスト前は「いい点が取れますように」とか、野球の試合前には「活躍できますように」などなど。
ばあちゃんとは10年前に亡くなった義理の母のことで、今は仏壇に飾られている「写真の人」なのである。
数年前に妻の実家から仏壇を預かった。毎日のご飯のお供えを子どもたちに任せているうちに、いつの間にか「ばあちゃん」へのお願いが始まっていたのだ。
この「ばあちゃん」だが、孫がよほどかわいかったのか、それなりに頼みごとを聞いてくれるのである。気をよくした息子は、最近では「ホームラン打てますように」とか「100点取れますように」と頼みごとの内容がどんどんエスカレートしていく。
ばあちゃんもそれにこたえようと必死で、ホームランや100点とまではいかなくても、それなりに納得できる結果を与えてくれるのだ。
本人はすっかり「ばあちゃん」のおかげだと思い込み、帰宅すると「ありがとうございました」と仏壇に報告することが日課になった。この前は、「行ってきます」と家を出たかと思えば、すぐに帰ってきて一言「ばあちゃんにお願いするのを忘れた」。
本人にとっては何よりも大事な忘れ物だったらしい。
ばあちゃんはお願いを聞くことで、孫に「感謝の心」を伝えたかったのかもしれない。

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